第3エチレン製造装置(3EP)
大型分解炉建設
分解炉は、エチレンプラント最上流の基幹設備で、その心臓部ともいえます。
現在、当社(3EP)ではこの分解炉を18炉保有していますが、大半を占める14炉は生産能力が年2万5000トンと小型で、建設から約50年が経過しています。
このため、老朽化による安全性や、保全工事の増加・長期化に伴う生産能力の問題が懸念されてきました。これら諸問題を未然に防ぐため、2020年に大型分解炉2炉をより効率の高い新型炉へと更新しました。中長期的には同炉をさらに2炉新設し、旧型の分解炉は一部廃炉にしていく予定です。
より生産効率の高い分解炉への切り替えが進めば、運転管理の強化とともに製品のさらなる安定供給に繋がるだけでなく、使⽤燃料の削減に伴うCO2排出量や環境負荷の低減なども実現できます。分解炉の大型化および機能維持は、当社の基盤を支える重要な施策です。
第2ビニルエーテル(2ADV※)
製造装置の新設
当社はこれまで自社技術による誘導品の創出に取り組んできました。その中でエチレン製造装置から抽出されるアセチレンの有効活用策として1998年に生産を開始したビニルエーテル類は、これを使用することで低粘度、低毒性、低刺激性など、様々な機能を付加することができる高機能製品の⼀つです。
当社のビニルエーテル類の用途は大きく3種類。紫外線硬化型インキ、高耐候性フッ素樹脂塗料およびコンクリート混和剤の各種製品向け原料としての用途で、これらの製品は、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)規制の厳格化等に伴う環境対応や、社会インフラ整備の活発化とその耐久性向上といった社会的な要請を受け、国内外における需要が拡大しています。既存のビニルエーテル製造装置の4倍の生産能力(3,000トン/年)を有する2ADV装置を2020年に新設しました。2ADV装置の完成により、お客様が求める機能を実現するための製品改良と増産対応の両面で、世界的に⾼まる需要に対応していきます。※:Acetylene Derivatives Vinylether
プロピレン精留設備新設
当社の第3エチレン製造装置で製造されるケミカルグレードのプロピレンは、ポリマーグレードに比べ純度が低いため、用途やユーザーが限定されていました。一方、隣接するコスモ石油においても、FCC(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解)装置から副生されるC3留分の活用が課題となっていました。そこで両社は、双方の留分をポリマーグレードに高純度化する精留設備を建設することに合意し、共同事業としてスタートさせました。
ポリマーグレードプロピレンは、ポリプロピレンの原料として、その用途は包装材や繊維、容器、自動車部品など実に広範囲で、精留設備の新設によって新たなビジネスの創出や、その活動を通じた社会への貢献が期待されています。
さらに設備完成後は、燃料やユーティリティの融通を含め「石油精製―石油化学」の連携を⼀層深めていく予定です。このプロジェクトは、コンビナートの競争力やプレゼンスを高め、地域経済の活性化にも繋げていくための鍵となる事業です。
CAP※設立への参画
荒川化学工業(株)、コスモエネルギーホールディングス(株)との共同出資により、「千葉アルコン製造(株)(CAP)」を設立し、水素化石油樹脂の生産・販売をスタートさせます。
水素化石油樹脂は、当社の未使用留分(C9留分)を活用し、荒川化学工業の製造ノウハウによって製造するもので、紙おむつ等の衛生材に使用されるホットメルト接着剤の原料として利用されます。衛生材の多くは、インドやその他アジア諸国を中心とする人口増加や経済成長により、グローバルな需要増が見込まれており、⼈々の豊かな暮らしの実現に向けた社会的ニーズとなっています。※:Chiba Arkon Production,Limited
南岸防消火設備の再構築
石油化学コンビナートで万一災害が発生すると、その被害は甚大になるため、防消火設備の性能やその検査方法などは「石油コンビナート等災害防止法」等の保安法令で厳格に規定されています。
法規は必要に応じて改正されていますが、千葉工場南地区の防消火設備は成り立ちが古く、現行法への適合が必要な箇所も出始めています。
そこで当社では、近隣住民の皆様を含めた地域全体の安全・安心をより一層確保するべく、行政からの指導を仰ぎながら防消火設備の再構築を進めています。人々の安全で快適な暮らしと、当社の持続的成長を支えるために不可欠なプロジェクトです。